22世紀 ~今私に何ができるか~

LINEで送る
Pocket

2018年06月09日、私はCMのオーディションで

横浜にいた。

帰りの新幹線は御世話になっている

いよくさんとのミーティング次第、

19:30 頃三軒茶屋で予約した。

「22:00 にしよかなぁ~、

もうちょっと早く乗れそうだから

いつものC20が空いてる列車はと・・・」

その前の時間もその後の時間も

この席が空いている車輛はなかった。

引き寄せられたとしか思えない。

東京駅ではがらがら、品川でも少しだけ、

横浜で大量の人が乗り合わせてきた。

シューズを脱いで台本を読み始めたところ、

「キャー!誰かっ!!」

10人程の女性の集団が

連呼しながら後方へ走ってきた。

キョトンとしたが、

直感で毒ガスか火事を発想し

同じ流れに乗って走り出した。

走りながら私の前を走る白いブラウスの女性の

肩辺りが真っ赤なのに気付いた。

血液らしきものが滴っている。

「暴漢ではないか?

であれば私の直ぐ後ろにいるかもしれない。

今止まったら別のパニック事故が起こるか?!」

様々な迷いを感じながら走り続けた。

16号車の最後尾前の壁で集団が止まったので、

何人かも何を持っているかも分からないが、

振り返りながら闘うしかないと心を決めた。

近付く集団の中には暴漢はいないようだった。

直ぐに被害女性に目を向けた。

被害女性は首を押さえながら、

「止血が必要です、タオルを下さい。」

御自身の口から話していた。

「タオル!タオルありませんか?!」

叫ぶと数人の方が惜しまず提供して下さった。

「医者を探してくる。」というと、

「私看護師です。」続けて、

「足を上げたいのでなにかありませんか?」

被害女性の周囲に

少なくとも3人の方がついて下さった。

”今私に何ができるか”

私は医者ではない。

これ以上ここにいてできることはない。

朱色の血液だったので動脈血ではないかも、

と思った。

前へ走りだして

「医者は?!」

と叫び続けた。誰かが言った。

「意識はしっかりしてる。」

私は直ぐに被せて叫んだ。

「いや、(出血次第で)

意識が遠のいていくと危ない、医者は?!」

数秒後

「医療従事者です。」

と女性が後方へ走って下さった。

前方へ歩いていくと痙攣かと思う程震えながら

手が真っ白に血の気が失せた女性が

うずくまっていた。

衝撃的な現場にいるショックであろう。

一人ついていて下さるので更に前へと向かった。

15号車の連結部に左肩を

タオルでグルグル巻きにしている女性が

座り込んでいる。

私が見た二人目の被害者だろう。

お二人の方がついていて下さるので

14号車まで戻った。

暴漢であろう者は13号車以前で

獲り抑えられていると思われた。

今蛮勇で前に向かって

追加の事件を起こしてはいけない。

ここに留まって次に起こるかもしれない、

想像もつかない何かに備えた。

未だ相当の方々が

後方へ避難していると思われ座席はまばら、

通路には16号車の最後尾から13号車に向けて

点々と滴った血液痕が続いていて

相当量の出血が想像された。

後方から状況の掴めていない車掌が走ってくる。

「16号車の最後尾が首から出血の女性!

15号車に肩から出血の女性!

最後尾の方がより重症の筈!

ただ本人が看護師らしく

自分の状態が把握できている様子!

医療関係者が計3人被害者に向かった!」

車掌に伝えると後方へ向かった。

新幹線は停止中。

震えあがっている女性が多い。

死亡された男性の情報は

ここまで届いてきていなかった。

状況の変化がなくなったところで

小田原迄列車は移動した。

「現在神奈川県警の要請で

ドアを開けることが出来ません。

怪我をされた方、

気分が悪くなった方は仰って下さい。云々。」

興奮冷めやらぬ大量の人々。閉塞空間。

私も少し頭がボーッとしてくるのを感じた。

「申し出る」

ということもはばかる方が多いと

容易に想像される状況。

”今私に何ができるか”

席を立ち14号車の連結部で

捕まえた車掌に伝えた。

「ここ(小田原)で起きたわけではない。

車輛は動かしても現場状況は変わらないし

現場検証は出来る。

心拍数が上がった状態で閉塞環境が続けば

過呼吸や意識が遠のく=気絶する人が出る

可能性がある。

体調が悪い人は言ってくれと言っても

続出したら絶対に対応出来ない。

県警に伝えて、若しくは県警の人を呼んで。」

「分かりました、伝えます。」

そろそろ御手洗いにも影響が出始めた。

「トイレが待ちで使えないのよ。」

身内同士の会話が漏れ聞こえた。

”今私に何ができるか”

12号車迄行くと黄色テープで

完全シャットアウトされていた。

ドアをノックして可能性を伝える。

「御手洗いが間に合わない可能性がある。

その場合はどうすればいい?」

「御手洗い使えないですか?」

「いや、待ちが大量に出る可能性があるので

その場合はどうしたらいい?」

「現場検証しているのでお待ち下さい。」

語気が強い。

「そもそもここで起きたのではない。

現場検証は移動しながらでも出来る。

大量に我慢出来ない人が出たら

どうすればいいのか聞いている。」

「一輛目から順に降りて貰っていますから

お待ち下さい。」

「一輛につき何分かかってる?」

「分かりません。今その状態ですか?」

「そうなってからでは

対応出来ないから聞いている!」

「そういう方が出たら対応します!」

「ではそういう人がいたら

連れてくるから対応して。」

そのまま13号車と14号車の連結部にある

御手洗いへと向かった。

直ぐに待ちが出来たので、

「今満室です、もし我慢出来なかったら

県警に対応して貰いますから仰って下さい。」

唯一老齢の女性が怪訝な顔をされていたが、

「この機に乗じてトイレの前で

女性目的で声をかけている変態じゃないの?」

とでも思っていたかもしれない。

もし何か言ってきたら、

「私は最悪を考えながら最善を尽くしている。

あなたの偏見に付き合っている暇はない!」

というセリフを用意していた。

この繰り返しを続けると

次第に状況は落ち着いてきた。

私の前で一人の男性が泣き崩れた。

「大丈夫ですか?救急車を呼びますか?」

と声をかけると、

「大丈夫です。血を見るのが苦手で・・・」

「そうですよね、ショックですよね。」

背中をさすりながら寄り添った。

人一倍優しい方なのだろう、

こんな凶悪な現場には相応しくない。

キャパが満杯と思え

今日のショックの彷彿を心配した。

「今後人が近付くだけで

ビクンッ!となってしまうような

PTSD症状が出る可能性があるから、

見たこと感じたことを話せる

心療内科の先生をつくっておくといいですよ。」

この時は否定されたが、

三島でも同じ症状を訴えられていたので、

再度同じ言動で寄り添った。

「分かりました、ありがとうございます。」

 

三島で別車輛に乗り換えが行われ

JRは名古屋~大阪~京都迄の延長対応、

ローカル列車の臨時運行、

寝泊まり出来る車輛の提供を行なった。

 

その後の二次的パニックや

二次的トラブルは起こらなかった。

どう捉えるか?

「そんなこと起こらないんだから

あんた必要ないじゃん。

何?カッコつけ?」

とも言える。

結果を見届けてから戻って鑑みる者が、

今から何が起きるか分からない状況で

言動したことを批判することは許さない。

答えは、

”起こり得ることを想定して

先手を打ったから、

その安心感が蔓延し、

起こる可能性はあったが

結果的に起こらなかった。”

である。

 

”最悪を想定して最善を尽くす”

を自身に課しながら

”今私に何ができるか?”

を自問自答し続ける。

私の

悔いなき生き様を目指す修行の旅は続く・・・

 

取材陣から

「飛行機と比較して

新幹線のセキュリティーはどうですか?」

と一定の回答を期待する質問があったが、

「新幹線に限らず

そういう社会なんだなと思う。」

とだけ答えた。つまり、

新幹線が行えばローカル列車で、

バスで、

同じことが起こるだけ。

要はやり易いところに

そのツケが回るだけ、

という意図が含まれている。

企業は在宅での仕事が可能な

仕組みを構築していくのが

ベターだと思っている。

逃げ場のない大量輸送提供団体は、

セキュリティーシステムの確立出来る

資金力のある団体のみに集約する、

というところまで考えており、

短いコメントでは

到底表現しきれなかったからである。

 

最後に。

亡くなった方の

御冥福を心よりお祈りします。

怪我をされたお二人の女性には、

出来るなら回復後にでも

お見舞いに伺いたいと思っています。

 

2018.06.10. (Sun.)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LINEで送る
Pocket